建築・庭園情報
- 名称：英国大使館別荘記念公園
- 旧称：英国大使館別荘*1
- 旧称：アーネスト・サトウ卿別荘*2
- 設計：不明（地元の大工*3、またはジョサイア・コンドル(Josiah Conder)*4）
- 作庭：伊藤小右衛門*5*6
- 施主：アーネスト・サトウ(Sir Ernest Mason Satow)*7
- 完成：明治29年（1896）*8
明治維新を見た英国外交官・アーネスト・サトウ卿が辿り着いた安らぎの地
幕末、明治維新を一外交官として関わり、その後駐日英国公使や駐清英国公使を務めたアーネスト・サトウ卿。彼が駐日英国公使時代に奥日光で別荘を建てたことはあまり知られていません。その後別荘は歴代の駐日英国大使へと引き継がれ、現在では「英国大使館別荘記念公園」として一般公開されています。
訪問当日の様子は下記のページでも掲載していますので、よろしければご参照ください。
英国大使館別荘の様子
一見すると、スタイリッシュな印象を持つ英国大使館別荘ですが、近づくと和風建築の雰囲気に気づく不思議な建築です。
1階展示室
駐日英国大使館からの寄贈時、1階の食堂、客間、書斎だった部屋は共に展示室へ改装されています。シンプルな内装が印象的ですね。
2階展示室
2階展示室は、元々大使の部屋として使われていた部屋でした。中禅寺湖の景色が素晴らしいです。
広縁
別荘の湖側には1階、2階ともに広縁が設けられています。訪問当日は曇りでしたが、それでも中禅寺湖の景色がとてもきれいでした。晴天時や紅葉の季節の時もいずれ訪ねてみたいですね。
庭園の様子
別荘の南側には日本庭園風の石組、隣接する別荘を繋ぐ小径、西側の湖側には敷地を広げるために設けた三段テラスがあります。当地の自然を活かした庭造りが行われているようです。
枯滝石組
英国大使館別荘の南側に隣接するあたりには、日本庭園風の枯滝石組が造られています。現地解説板によると、東京・染井村（現在の東京都豊島区駒込・巣鴨周辺）の植木屋・伊藤小右衛門に相談し、現地まで出向いて作庭されたそう*9*10。初見時、アーネスト・サトウ卿が自らの別荘に枯滝石組を造らせていた事実に大変驚くとともに、そこまで日本のことを理解していたことに衝撃を受けました。
小径
庭園内には隣接する別荘に向かう小径が整備されています。実際の山中の自然を活かした気持ちの良い空間です。
三段テラス
三段テラスは、主に敷地面積を広げるために設けられた三段の野面積みの石段です。アーネスト・サトウ卿の日記にはジョサイア・コンドル教授に相談して設置を決めたことが記されています*11。コンドル教授が別荘の建設にアドバイスをしているのは驚きでした。意外なところで繋がっているものです。
アーネスト・サトウ卿が中禅寺湖畔に別荘を設けて4年後の明治33年（1900）、駐清英国公使に任じられ離日します。別荘は後任の駐日英国公使に引き継がれ、その後長きにわたって英国大使館の別荘として使用されました。彼が愛し、そして発見した奥日光の美しさは、今なお多くの人々を癒やしてくれています。
*1:日光自然博物館『英国大使館別荘記念公園』https://www.nikko-nsm.co.jp/british.html（2022.12.30 閲覧）
*2:日光自然博物館『英国大使館別荘記念公園』https://www.nikko-nsm.co.jp/british.html（2022.12.30 閲覧）
*3:英国大使館別荘記念公園『現地解説板 サトウの別荘へのこだわり』（2022.08.12 閲覧）
*4:井戸桂子（2009）「アーネスト・サトウにとっての日光中禅寺」『駒沢女子大学 研究紀要』p40
*5:英国大使館別荘記念公園『現地解説板 こだわりの庭園で植物を楽しむ』（2022.08.12 閲覧）
*6:英国大使館別荘記念公園『現地解説板 こだわりの庭』（2022.08.12 閲覧）
*7:日光自然博物館『英国大使館別荘記念公園』https://www.nikko-nsm.co.jp/british.html（2022.12.30 閲覧）
*8:日光自然博物館『英国大使館別荘記念公園』https://www.nikko-nsm.co.jp/british.html（2022.12.30 閲覧）
*9:英国大使館別荘記念公園『現地解説板 こだわりの庭園で植物を楽しむ』（2022.08.12 閲覧）
*10:英国大使館別荘記念公園『現地解説板 こだわりの庭』（2022.08.12 閲覧）
*11:英国大使館別荘記念公園『現地解説板 三段テラス』（2022.08.12 閲覧）
