庭園情報
元は有栖川宮御用地
東京・広尾。駐日ドイツ大使館に隣接する傾斜地に、その公園はあります。筆者は東京都立中央図書館への通り道として、初めてこの公園を訪ねた時の衝撃を今でも忘れられません。東京の公園というものは、かくもこのように歴史を感じさせるものなのかと。
江戸時代は盛岡南部家下屋敷であり、明治維新後は有栖川宮御用地、高松宮御用地となり、その後高松宮殿下のご厚意で東京市へ下賜された公園です。
徽軫灯籠
広尾口から都立中央図書館に向かう道中、徽軫灯籠が置かれている光景が見られます。有栖川宮記念公園に置かれている徽軫灯籠は片脚が短くなっている「兼六園型」の灯籠です。兼六園の徽軫灯籠は明治期に破損により片脚が短くなった経緯があります。このことから、有栖川宮記念公園の灯籠は少なくとも明治以後に設置されたものと推定されます。
州浜
都立中央図書館の道中には、州浜と思しき石が敷かれている場所があります。また、滝から流れる渓流の中州にも州浜と思われる場所があります。後者の方は比較的大きさが揃った玉石を敷き詰めた伝統的に手法で造られています。作庭時期の違いが手法に表れていると思われます。
大滝
有栖川宮記念公園の池は2か所から水が流れ込みます。その一つ、公園中央部の滝から池へ流れる所は、後述する北側の渓流と比べ、急流のような情景が再現されています。
中島
有栖川宮記念公園の池には島が2つ存在します。但し、一般公園の制約か、やや荒廃しているように感じます。可能であれば本来の美しさを取り戻してほしいところです。
太鼓橋
広尾口から左手に進むと見ることができるコンクリート製の太鼓橋。近代的でありながら、優雅な曲線を描いた橋です。昭和9年(1934)に東京市が有栖川宮記念公園として開園した際に設置したものとされます。
渓流
先述のように、有栖川宮記念公園の池には2か所から水が注ぎ込まれている形になっています。北側の滝から発する渓流は流路が長いため、中央部の滝と比べ比較的穏やかな流れです。両者とも東京都区部の様子とは思えない、自然豊かな光景となっています。
高級住宅地が広がる広尾にある、自然豊かで趣を感じさせる日本庭園。日本庭園の池泉回遊式庭園の基本要素を踏まえていますが、一方で目立った石組等は確認できないことから、明治以後の自然主義の庭園といえます。今後とも多くの人々を癒してほしい公園です。