まだ知らぬ、日本を訪ねて

趣味の日本庭園や近代建築の紹介ブログです。

青岸寺庭園【訪問編】

青岸寺  撮影:2022.05.02

庭園情報

  • 名称:青岸寺庭園
  • 作庭:香取氏
  • 施主:興欣和尚
  • 完成:延宝六年(1678)
  • 保護:国指定名勝 青岸寺庭園

鉄道要衝の地にある名勝庭園

 滋賀県米原市東海道本線北陸本線、そして東海道新幹線が乗り入れる鉄道要衝の地、米原駅から徒歩10分程度の距離に位置するのが、青岸寺庭園です。青岸寺は婆娑羅大名・佐々木道誉の発願により南北朝時代に建立された米泉寺を起源とする寺院ですが、戦国時代に兵火により本尊のみを残して焼失、約150年後の江戸時代前期に再興されました。見る者を一瞬で別世界に誘う名庭は延宝六年(1678)に作庭され、現在では国の名勝に指定されています。

 訪問当日の様子は下記のページでも掲載していますので、よろしければご参照ください。

zuito.hatenablog.com

庭園の様子

青岸寺庭園  撮影:2022.05.02

 初めて訪ねた時、その美しさ、神秘さに衝撃を受けました。枯山水の庭園ではあるものの、白砂の代わりに苔を用いていることがこの庭園最大の特徴となります。

書院からの眺望

青岸寺庭園 書院からの眺望  撮影:2022.05.02

 訪問当日は雨模様の天候だったためか、本堂のガラス戸が閉まっていました。それでも、ガラス戸越しからの庭園の美しさが十分伝わってきます。

枯池

青岸寺庭園 枯池  撮影:2022.05.02

 前述の通り、普段は枯池であり、白砂の代わりに苔を用いて海を表現しています。訪問当日は前日からの雨が上がったころであり、水が少し溜まっている状態でした。澄み切った池の水と青々とした苔がなんとも美しい景観を見せてくれます。

蓬萊島

青岸寺庭園 蓬萊島  撮影:2022.05.02

 青岸寺庭園の蓬萊島は、蓬萊島であると同時に鶴亀両島も兼ねている意匠となっています。蓬萊島の外周部は亀石組となっており、島西側の本堂に向かうような形で配置された石が亀頭石で、島南側には手足石が確認できます。蓬萊島中心部は鶴石組であり、島の中心石が羽石となっています。

三尊石と枯滝石組

青岸寺庭園 三尊石と枯滝石組  撮影:2022.05.02

 蓬萊島の奥には三尊石が設けられ、そこから流れ落ちるように枯滝石組が造られています。三尊石は通常の配置とは異なり、中尊石が手前に配置されたかなり珍しい構成です。

切石橋

青岸寺庭園 切石橋  撮影:2022.05.02

 蓬萊島西部の対岸には南北にそれぞれ出島が造られ、そこを結ぶように切石橋が架けられています。

織部灯篭

青岸寺庭園 織部灯篭  撮影:2022.05.02

 庭園の一角には織部灯篭があります。この織部灯篭、竿に字形無く彫像のみ、中台は灯篭の笠を逆にした六角形のもの。中央部には作り出しがあり、その上に六角の火袋があって、各面に地蔵尊が彫られています。笠は蓮華寺風と柚木形の折衷のような形態となっているなど、各部位が寄せ集めで構成されていますが、破綻なくまとまっています。

降り式井戸の蹲

青岸寺庭園 降り式井戸  撮影:2022.05.02

 庭園東側には降り式井戸の蹲が設けられています。資料が乏しいため、降り式井戸が設けられた経緯は不明ですが、この井戸の水が一定量を超えると庭園の枯池に水が流れる仕掛けが施されているようです。重森完途氏は本庭当初のものではないとしていますが*1、現地解説板では本庭を作庭した香取氏の技法として紹介しています。

書院「六湛庵」からの眺望

青岸寺庭園 書院「六湛庵」からの眺望  撮影:2022.05.02

 本堂から渡り廊下でつながっている書院「六湛庵」は明治37年(1904)に建立されました。他の建築とは一段高い場所に造られているため、また違った景観を見せてくれます。作庭当初にはない建築ですが、ゆったりと静かな時を過ごせます。

 現地に行けば、国の名勝に指定されているのも納得する、圧巻の庭園です。米原駅から徒歩10分程度で行けるため、途中下車できる場合はぜひとも訪ねたい庭園です。

*1:重森三玲・重森完途(1971)『日本庭園史大系17 江戸初期の庭(四)』p67