庭園情報
二川宿に残る商家の遺構
愛知県豊橋市にあるかつての宿場町、二川宿。二川宿は国内でも唯一の「本陣」、「旅籠屋」、そして「商家」の三つの遺構が現存している宿場町です。その三つの構成物件の一つが商家「駒屋」となります。
二川宿散策の様子については、下記のページで掲載しておりますので、よろしければご参照ください。
庭の様子
商家「駒屋」の保存修理工事報告書には次のように記されています。
駒屋の建物は過去80年ほど空き家であったため、昭和初期の姿をよくとどめている。しかし、使われていた時代には用途や居住者構成の変化に応じて増改築がくり返され、また自然災害や経年劣化を原因とする損傷に応じて修理工事がなされてきた。文化財指定を受けて公開活用するにあたり、平成21年[原文ママ]（2009）年度に復原活用基本計画、平成23（2011）年度に実施設計が行われ、2012（平成24）年から3ヶ年事業として改修復原工事が行われることになった。*1
保存修理報告書の内容を確認すると当時の石灯籠等を活用しながら復原整備されていることが分ります。
中庭
中庭は主屋と離れ座敷、そして渡り廊下に囲まれた空間に設けられています。離れ座敷、渡り廊下とも明治末期～大正期頃に建設されているので*2、その際に整備されたと考えられます。ただし、保存修理工事報告書を確認すると、絵図には飛石が描かれていますが*3、現在は確認できません。報告書には中庭は復原したとの記載もあることから*4、保存修理工事の際に整備されたと考えられます。
茶室廻りの庭
茶室は明治末期から大正期頃に建設されています*5。保存修理工事報告書によると茶道の趣味を持っていた九代目当主が普請したものと考えられ、賣茶流を反映しているためか草庵風茶室とは異なる趣になっています*6。茶室廻りで用いられている踏み石や石灯篭は現存していたものを可能な限り残しながら活用しています*7。
築山
茶室廻りの庭と一体のような形で築山が整備されています。保存修理工事に掲載された明治時代の絵図にはこの部分に倉庫が建てられていることから、後年の作庭であると考えられます*8。
庭園
駒屋の最奥部は庭園として整備されています。報告書の記載から、保存修理工事の際に地域の交流施設として有効活用するために整備されています*9。
商家「駒屋」の庭は大人しい印象を受ける一方、茶室廻りでは保存修理工事前からあった踏み石や石灯籠を再活用して過去からのつながりを意識した設計となっています。80年ほど空き家だった建築が、大規模な保存修理工事を経て、現在では地元の方の交流の場として活用されている様子が素晴らしかったです。
*1:豊橋技術科学大学（2015）『豊橋市指定有形文化財 商家「駒屋」（主屋・脇門・離れ座敷・渡り廊下・茶室・南土蔵・中土蔵・北土蔵・北倉）保存修理工事報告書』p7
*2:豊橋技術科学大学（2015）『豊橋市指定有形文化財 商家「駒屋」（主屋・脇門・離れ座敷・渡り廊下・茶室・南土蔵・中土蔵・北土蔵・北倉）保存修理工事報告書』p2
*3:豊橋技術科学大学（2015）『豊橋市指定有形文化財 商家「駒屋」（主屋・脇門・離れ座敷・渡り廊下・茶室・南土蔵・中土蔵・北土蔵・北倉）保存修理工事報告書』p28,41-42
*4:豊橋技術科学大学（2015）『豊橋市指定有形文化財 商家「駒屋」（主屋・脇門・離れ座敷・渡り廊下・茶室・南土蔵・中土蔵・北土蔵・北倉）保存修理工事報告書』p11
*5:豊橋技術科学大学（2015）『豊橋市指定有形文化財 商家「駒屋」（主屋・脇門・離れ座敷・渡り廊下・茶室・南土蔵・中土蔵・北土蔵・北倉）保存修理工事報告書』p2
*6:豊橋技術科学大学（2015）『豊橋市指定有形文化財 商家「駒屋」（主屋・脇門・離れ座敷・渡り廊下・茶室・南土蔵・中土蔵・北土蔵・北倉）保存修理工事報告書』p3
*7:豊橋技術科学大学（2015）『豊橋市指定有形文化財 商家「駒屋」（主屋・脇門・離れ座敷・渡り廊下・茶室・南土蔵・中土蔵・北土蔵・北倉）保存修理工事報告書』p11
*8:豊橋技術科学大学（2015）『豊橋市指定有形文化財 商家「駒屋」（主屋・脇門・離れ座敷・渡り廊下・茶室・南土蔵・中土蔵・北土蔵・北倉）保存修理工事報告書』p28,41-42
*9:豊橋技術科学大学（2015）『豊橋市指定有形文化財 商家「駒屋」（主屋・脇門・離れ座敷・渡り廊下・茶室・南土蔵・中土蔵・北土蔵・北倉）保存修理工事報告書』p13
