11月初旬、特急伊那路で天龍峡へ向かう途中、車内にて「鳳来峡」の紹介アナウンスがありました。
鳳来峡はJR飯田線の湯谷温泉駅付近から柿平駅付近にかけて続いている宇連川沿いの渓谷です。紅葉も本格的になってきたので、今回は湯谷温泉駅から三河槙原駅までの区間を散策しました。
湯谷温泉
当日のアクセスはJR飯田線の普通電車で湯谷温泉駅へ向かいました。豊橋駅から1時間強で到着します。どことなく「昭和」感が良い雰囲気の温泉郷です。
瑠璃嵒山薬師如来石像
薬師如来ののぼり旗が供えられている場所を進むと辿り着く、どことなく優しげな表情が印象的な薬師如来石像。現地の説明文によると、石像が奉安されたのは寛政十二年(1800)とのことです。200年あまり、行き交う旅人たちを眺めていたであろう石仏。今回の散策の安全を祈りながら手を合わせました。
湯谷温泉郷・湯谷の大滝
石仏の後ろは湯谷温泉・湯谷の大滝のビューポイントの一つとなります。宇連川が造りだしたであろう岩の間を流れる湯谷の大滝が印象的な景観です。
馬背岩・湯谷の小滝
薬師如来の近く、馬背岩は湯谷温泉駅から徒歩5分程の場所にあります。国の天然記念物に指定されている馬背岩。現地の案内板では次のように説明されています。
火山灰や火砕流が堆積してできた凝灰岩の割れ目にマグマが上昇してきて固まり、板状の岩体(岩脈)をつくりました。
階段のように見える割れ目はマグマが冷えて堆積が縮むときにできたもので、断面が六角形をしています。柱状に割れるので柱状節理といいます。
岩脈をつくる安山岩は、まわりの凝灰岩より硬いため、川の浸食に耐えて、背骨のように飛び出しています。
説明を見る前に人工的に造ったと思った階段は、柱状節理による自然現象によるものでした。自然の不思議さ、雄大さを感じさせます。
馬背岩の近くには「湯谷の小滝」と呼ばれる滝があります。
湯谷大橋からの眺望
湯谷大橋からの眺望です。ほかの場所と違い、一段高い場所から鳳来峡・湯谷温泉を眺めることができます。
浮石橋からの眺望
吊り橋である浮石橋からの眺望です。馬背岩や湯谷の小滝、湯谷の大滝、湯谷温泉を眺めることができます。
鳳液泉の碑
湯谷集会所のそばに設置されているのが「鳳液泉の碑」。こちらの碑は寛政十年(1798)に建てられており、鳳来寺の開祖である利修仙人にまつわる逸話を記してます。こうしてみると、先日訪問した天龍峡よりも古い歴史を持っていることがわかります。
鳳来峡
宇連川沿いの道を進むと、湯谷温泉を離れ、JR飯田線沿いの道から鳳来峡を眺めることになります。
渡瀬橋からの眺望
渡瀬橋からの眺望です。湯谷温泉郷からの宇連川は、平らな川底であることから、「板敷川」の異称をもっています。確かに、平らです。
弘法山園地からの眺望
弘法大師ののぼり旗が供えられている階段を上った先にある弘法山園地からの眺望です。鳳来峡の眺望が見れます。
飯田線沿いの眺望
弘法山園地を降りて道を進むと、飯田線と並行して整備された小道が続きます。ここからもよい眺めが続きます。
養乙女橋からの眺望
飯田線沿いの小道をさらに進むと養乙女橋にたどり着きます。ここからも鳳来峡の眺望が見れます。
宇連川の甌穴群とその付近
鳳来峡屈指の景勝地とされる、宇連川の甌穴群。水の作用で柔らかい岩が削られた結果、穴や窪み、淵、そして滝へと姿を変えています。長い年月をかけて作られた自然の景色をみると、感慨深いものがあります。
加周𣘺からの眺望
さらに上流へ進むと加周𣘺にたどり着きます。ここからは屏風のようにつづら折り状に形どられた「琵琶淵」と呼ばれる場所が見えます。地元の民話の舞台にもなっているようです。なお、「加周𣘺」は現地の銘板に記載されていました表記をそのまま使用しています。
宮下橋からの眺望
加周𣘺のさらに上流、宮下橋からも鳳来峡の眺望を望むことできます。ここまでくると、ずいぶん山奥まで来たものだと実感します。帰りの電車のことも考え、今回の散策はここまでにし、宮下橋の最寄りの三河槙原駅より帰路につきました。
鳳来峡自身は、天龍峡よりも古い歴史を誇る景勝地です。天龍峡が断崖の様相であれば、こちらは比較的低い場所から自然が作り出した景色を楽しむことができる場所でした。