庭園情報
文京区の知られざる庭園
平成29年(2017)、「新江戸川公園」は「肥後細川庭園」へと名称を変更しました。無料で解放されている庭園にも関わらず、整備が行き届き、非常に気持ちがいい庭園です。今まではあまり知られていない庭園でしたが、名称変更と共に、文京区が知名度向上に積極的になったことは喜ばしいことです。
庭園の様子
小池
平成28年(2016)に設けられた南門から入ると、まず最初に見るのがこの小池です。肥後花菖蒲が植えられているため、6月になると咲くそうです。
中池
小池と大池の間に挟まれているのが中池です。紅葉が効果的に植えられているため、秋には素晴らしい景色が期待できます。池の護岸を見てみると、石が配置されていますが、全体的に大人しい印象です。この中池は松聲閣からの眺望を意識して設計されていると言えます。
大池
肥後細川庭園の主役となるのが、大池です。中池と大池を分けている土橋付近でみる大池は、この庭園の眺望ポイントになります。この景観をみると、日本庭園には建屋がいかに大事かが分かってきます。
大池にも石が多く配置されていますが、それほど主張をしていません。石の様子を見る限りは江戸時代後期の作庭と推測することが可能です。
松聲閣側から見る大池も、この庭園有数の眺望ポイントになります。大池を実際よりも大きく見せる工夫がされており、春夏秋冬移り変わる景色が楽しめるようになっています。
松聲閣
肥後細川庭園には大正年間に建てられた松聲閣という建築が残されています。細川侯爵家がこの土地を所有していた頃からの建築で、第79代内閣総理大臣・細川護熙氏も住んでいたとされます。この庭園は、この松聲閣からの眺望を意識して設計されているため、ぜひ中に入って庭園を眺めることをお勧めします。
築山
肥後細川庭園は崖地に築かれていますが、崖の反対側にも築山を設けています。向かいが木々に覆われた崖のため、近代的なビルや住宅が視界に入らず、作庭当初からの景観が残っていると考えられます。
雪見燈籠
日本庭園には欠かせない雪見燈籠も設置されています。この燈籠も、やはり松聲閣からの眺望を意識して配置がされていると推測できます。
滝
崖地に造られた庭園のため十分な高低差も確保しやすいにも関わらず、滝は非常に大人しく仕上げています。
亀石
肥後細川庭園には大きな中島はありませんが、亀石自体は土橋と雪見燈籠の間に存在します。他の庭園と比較してもかなり小ぶりとなっています。面白いのは、この亀石、崖にある十三重塔を見つめているように見えます。作庭した施主には、なにか思いがあってこのようにしたのか、気になります。
小規模ながらも、東京の隠れた名園の一つ
東京都内にある庭園の中でも、比較的小規模な庭園です。しかし、松聲閣からの眺望を第一に設計したため、思った以上に広く見せる工夫がなされています。また、石の主張があまりみられないことから、非常に大人しい、落ち着いた庭園の印象を持ちます。庭園の整備状態は良好で、とても無料開放されているとは思えないほどです。知名度もまだ高くはない庭園ですが、間違いなく東京の隠れた名園の一つです。
次の記事は「歴史編①」です。よろしければご参照ください。