まだ知らぬ、日本を訪ねて

趣味の日本庭園や近代建築の紹介ブログです。

令和5年3月 郷土の森公園散策

 令和5年3月中旬、府中市にある郷土の森公園へ散策に出かけました。

府中市郷土の森公園 交通遊園  撮影:2023.03.19

新田義貞公之像

 分倍河原駅前のロータリーの中に、新田義貞の像が建立されています。鎌倉時代末期、北条得宗家による支配体制を打倒すべく蹶起した新田義貞分倍河原で激戦の末、北条軍を打ち破ります。多摩川という、鎌倉へと進撃していくことになります。ここが中世日本の転換点の舞台の一つと思うと、感慨深いものがあります。

新田義貞公之像  撮影:2023.03.19

府中市郷土の森公園

 府中市郷土の森公園は、府中市にある総合公園で、園内には交通遊園や野球場、サッカー場庭球場、総合体育館、総合プール等の施設が作られています。

府中市郷土の森公園 交通遊園  撮影:2023.03.19
交通遊園

 郷土の森公園内に整備されている交通遊園は、子供達が交通ルールを学べるよう整備された公園です。実際の道路を模して横断歩道や信号機等が設置されている他、蒸気機関車やバス、消防車が展示されていたり、ゴーカートに乗車することもできます。乗り物好きの子供たちには楽しそうな施設です。

府中市郷土の森公園 交通遊園  撮影:2023.03.19
国鉄D51形蒸気機関車

 国鉄D51形蒸気機関車は、昭和11年(1936)から昭和20年(1945)までに1,000両以上製造された、日本を代表する蒸気機関車の一つです。設計は、後に東海道新幹線を主導する島秀雄氏によるもの。郷土の森公園に保存されているD51 296号機は、昭和14年(1939)に川崎車輌(現・川崎車両)が製造、秋田県新潟県などの機関区に配属され活躍し、昭和47年(1972)に廃車、同年中にこちらで静態保存されました。

府中市郷土の森公園 国鉄D51 296号機  撮影:2023.03.19
国鉄EB10形電気機関車

 国鉄EB10形電気機関車は、昭和2年(1927)に芝浦製作所(現・東芝)等が2両製造した機関車です。当初は国鉄唯一の蓄電池機関車として製造されましたが、昭和6年(1931)に電気機関車に改造されパンタグラフが屋根に設置され、昭和46年(1971)まで貨物輸送で活躍しました。

府中市郷土の森公園 国鉄EB10 1号機 撮影:2023.03.19
東京都交通局6000形電車

 東京都交通局6000形電車は、日本車輌製造などで製造された路面電車です。郷土の森公園に保存されている6191号車は昭和25年(1950)に製造され、昭和53年(1978)まで走り続けた車両で、昭和56年(1981)から交通遊園に保存されています。

東京都交通局6000形 6191号車  撮影:2023.03.19

府中市郷土の森博物館

 府中市郷土の森博物館は、郷土の森公園に隣接している府中市の歴史を学べる施設です。博物館本館には奈良時代に設けられた武蔵国府や鎌倉時代末期における分倍河原の合戦、江戸時代の府中宿などの歴史が解説されている他、屋外には江戸時代から昭和時代初期の建築物を移築保存されています。

府中市郷土の森博物館  撮影:2023.03.19
旧府中尋常高等小学校校舎

 旧府中尋常高等小学校校舎は、昭和10年(1935)に現在の府中市寿町に建設された建築です。昭和54年(1979)まで使用されました。郷土の森博物館に移築されたのは、校舎の中の中心的な部分のみですが、当時の小学校の雰囲気がよくわかります*1

府中市郷土の森博物館 旧府中尋常高等小学校校舎  撮影:2023.03.19
府中町役場庁舎

 旧府中町役場庁舎は、大正10年(1921)に現在の府中市宮西町に建設された建築です。府中町の町役場として建築され、周辺町村の合併により誕生した府中市の初代庁舎としても使用された後、市立図書館、教育研究所として活用されました。昭和61年(1986)に現在地へ移築保存されています*2。「大正デモクラシー」の言葉で形容される大正時代のよき雰囲気が伝わってくるような建築です。それにしても、当時の町役場って小さかったのですね。

府中市郷土の森博物館 旧府中町町役場庁舎  撮影:2023.03.19
旧府中郵便取扱所(旧矢島家住宅)

 旧府中郵便取扱所(旧矢島家住宅)は、幕末~明治時代初期頃に建てられた住宅です。明治5年(1872)に当時の矢島家当主である矢島九兵衛が郵便取扱役に任命されたことから、自身の住宅を郵便取扱所としました。その後、歯科医院として洋風に改築されたりしましたが、平成元年(1989)までに郵便取扱所時代に移築復元されました*3。郵便制度の最初期にあたる建築で、どちらかというと住宅兼郵便局の性格が強い貴重な遺構です。

府中市郷土の森博物館 旧府中郵便取扱所(旧矢島家住宅)  撮影:2023.03.19
旧島田家住宅

 旧島田家住宅は、明治21年(1888)に建てられた店蔵です。元々は大國魂神社の数軒隣にあった薬局でした。移築前までにリフォームが施され、土壁の一部はコンクリートで補強されていましたが、柱や基礎など多くの部分で建築当時の姿で残されていることが分り移築保存されました*4。明治時代とは言え、まだまだ江戸時代の耐火建築が有効だった時代。歴史の連続性が感じられるのが良いですね。

府中市郷土の森博物館 旧島田家住宅  撮影:2023.03.19
旧田中家住宅

 旧田中家住宅は、江戸時代後期から明治時代にかけての府中を代表する商家です。明治天皇が兎狩りや鮎漁見物でこの地域へ行幸される際、行在所としても用いられ、昭和8年(1933)「明治天皇府中行在所」として国の史蹟(明治天皇聖蹟)に指定されていました。昭和15年(1940)に府中町の町有財産になりますが、戦後に史蹟指定が解除され、老朽化した建物などが徐々に取り壊されていき、御座所だけが残されます。その後、御座所の長期保存を望む声や、江戸時代の大店の雰囲気を再現できることから、平成元年(1989)に移築復元されました。失われた建築や庭等は宮内庁に残されていた屋敷図面や写真資料などを基に復原されています*5明治天皇聖蹟の一つですが、各地に残されている御座所と比較してもそこまで豪華な印象はありません。それがかえって居心地の良い場所として複数回使用されたのかもしれませんね。

府中市郷土の森博物館 旧田中家住宅  撮影:2023.03.19

 今回、府中市郷土の森公園を散策しましたが、なかなか広大な敷地で、全てを回り切ることはできませんでした。なかなか良い施設でしたので、また季節を変えて伺いたいですね。

*1:府中市郷土の森博物館(2021)「復元建物、郷土の森に建つ その1・・・旧府中尋常高等小学校校舎」『あるむぜお』No.136 p2

*2:府中市郷土の森博物館(2021)「復元建物、郷土の森に建つ その2・・・旧府中町役場庁舎」『あるむぜお』No.137 p2

*3:府中市郷土の森博物館(2022)「復元建物、郷土の森に建つ その7・・・旧府中郵便取扱所(旧矢島家住宅)」『あるむぜお』No.142 p2

*4:府中市郷土の森博物館(2022)「復元建物、郷土の森に建つ その5・・・旧島田家住宅」『あるむぜお』No.140 p2

*5:府中市郷土の森博物館(2022)「復元建物、郷土の森に建つ その6・・・旧田中家住宅」『あるむぜお』No.140 p2