庭園情報
- 名称:御殿山庭園
- 旧称:原家邸
- 作庭:原六郎など
- 完成:明治時代
- 住所:東京都品川区北品川4丁目7
高低差を活かした都会の中の庭園
東京・品川駅から徒歩10分あまり。御殿山トラストシティの一角にあるのが、御殿山庭園です。桜の名所として有名であった御殿山に所在しており、隣接する山手線、京浜東北線、東海道線、そして東海道新幹線がひっきりなしに通過していく中、別世界に居るように感じられる都会の中の自然主義庭園となります。
庭園の様子
池
庭園の南東部は窪地となっており、そこに池が作られています。嘉永六年(1853)の黒船来航後、江戸の最終防衛線構築のために品川台場が建設されました。その際、埋立造成用の土砂の採取場の一つとして御殿山が切り崩されできたのがこの庭園の窪地です。この池自体は明治期の地図や文献にも記されていることから、原家が屋敷地として所有していた時代からあったものと推定されます。
枯滝
池の北縁から園路を歩いていると、枯滝と思われる石組が確認できます。御殿山庭園ではこの枯滝以外、ほとんど伝統的な石組らしい石組が確認できませんでした。石組自体はそれほど豪勢な作りではなく、自然主義庭園に協調することが心掛けられているように感じます。筆者が訪問した際は、少し草に埋もれ気味でした。
流れの跡
枯滝からさらに先を歩いていると、流れの跡と思われる個所が2つあります。いずれも現在は枯れていますが、先ほどの枯滝とは違い、明らかにかつて水が流れていたかのような作りです。
北西の滝
流れの跡を辿りながら北西方向に登っていくと、もう一つの滝が見えてきます。まるで外国の古代遺跡のようなデザインに目が移りますが、隣には、従来の日本庭園のような滝もあり、不思議な組み合わせです。先述の流れの跡をみるに、かつてはこの滝を水源として池に注いでいたのではないかと推定できます。
原六郎氏の胸像
園路を歩いていると、白い胸像が配置されているのに気づかされます。園路が柵で塞がれているため、近づくことはできませんが、原六郎氏の胸像が設置されています。原六郎氏は明治を代表する実業家で、もともとこの庭園も原家邸の敷地になります。
茶室「有時庵」
園路を進むと茶室「有時庵」が見えてきます。この茶室は平成4年(1992)に建設されたもので、磯崎新氏による作品です。
南東の滝
窪地の池の南端部に人工の滝が設けられています。恐らくは平成2年(1990)に御殿山ヒルズ(現・御殿山トラストシティ)が完成した際に整備されたものと思われます。こちらも海外の古代遺跡のようなデザインで、かなり迫力がある滝です。現地に行ってみると、池に沿って建てられているホテルの施設のデザインと相まって、そこまでの違和感はなく、むしろ強烈な個性としての印象を与えています。
強烈な印象を与える人工的な滝に目を奪われがちですが、もともとは伝統的な石組がほとんど確認できない自然主義の庭園で、実業家が好むであろう明治の庭園の名残を感じられます。品川という都会の中に、これほどの環境が残っているのは羨ましいかぎりです。